02 December, 2021
厳しい環境から生まれた実用性と耐久性を兼ね備えた
船乗りに纏わるプロダクトをご紹介します。
厳しい海で働く船乗りたちの為に編まれたガンジーセーター。
1800年代から続く、伝統的なセーターです。
ハンドフレームニットが始まりとされています。
英国産の羊から採られたもの。
驚くほど雨や波しぶきを寄せつけません。
1着1着に添付されています。
前後どちらからでも着用できる仕様も昔から変わっていません。
しっかりとした編地は毛玉ができにくく、耐久性も抜群です。
船乗りにとって無くてはならない道具でした。
フィッシャーマンズスモック。
セーターを保護するために上から重ねて着用されました。
現代でも最高の日常着となり得ます。
のちにアメリカ海軍に採用され、水兵たちにも愛用されました。
伸縮性に富んだ編地は、頭部にフィットする事で保温性を高め、
2重の折り返しは、風の強い時に耳まで覆う事ができます。
丁寧に作られています。
04 November, 2021
この年季の入った油差しと赤い糸は、タペストリーブランケットを作る為に使用されています。ブランケットの製作に欠かせない道具についてマイクが深く語ってくれました。
「この油差しは、私が知る限り過去32年間ずっと使われているもの。おそらく50年物だと思うが、まだまだ現役で、全ての機械に良く油を回らせスムーズに動くようにしてくれる」
マイクが工場を引き継いだ時、2台の120インチドブクロス織機や無芯菅巻機、新しい整経機など、ウェールズを象徴する「タペストリー」のベッドカバーを製作できる設備も受け継ぎました。
タペストリーに使われる糸は、ウェールズ産の自然のままの羊毛の色を活かした天然素材のもの。
100%ピュアニューイングリッシュウール製で、イギリスの毛織物産業の中心地ハダースフィールドで長く続く会社がマイクの工場の為だけに紡いでくれています。
それから伝統的な染めの工程に定評のあるブラッドフォードの工場に送り、色糸に仕上げていきます。
1枚のブランケットを織り上げる為には大変な時間と労力が必要です。
織り機に経糸をセットする場合、前の経糸と2,552本もの経糸をつなぎ合わせなければなりません。シャトルに糸をセットするだけでも丸一日かかる場合もあるそう。キングサイズのタペストリーを織るには3時間、ダブルサイズで2時間半、シングルサイズでは約2時間かかります。
織機もまた古い機械の為、故障が見つかってもスペア部品のストックが無い場合があります。その場合、地元の鍛冶屋の力を借りて交換部品を作って取り付けねばなりません。
1枚のダブルサイズのベッドカバーを作る為に7マイル(約11Km)もの糸が必要だそう。それになんと530万回もシャトルが交差していると聞き、只々驚くばかりです。
Labour and Waitでは、ヴィンテージやアンティークの美しいブランケットをウェールズ中から集め販売していましたが、人気の高まりと値段の高騰もあり、染みや虫食いが無い状態の良い物を探し出す事が困難になってきました。
そのような時、マイクと彼の工場が高品質で現代的なブランケットを生産している事を知りとても喜びました。
とても大変な作業ですがその努力の結果、このような素晴らしいブランケットが生まれ、日本の私たちの元へ届けられています。
WELSH TAPESTRY BLANKET
27 September, 2021
Labour and waitの店内には、さまざまな種類のお鍋やケトル、食器などのキッチンツールのほか、ちり取りやランプシェードまであらゆる種類の琺瑯製品を見ることができます。
中でもオーストリアのRIESS(リース)はLabour and waitを語る上では欠かす事のできない存在です。
そもそも「RIESS」とはどのようなメーカーなのでしょうか?なぜ私たちはこれ程RIESSの琺瑯製品に魅力を感じるのでしょうか?
この美しいイラストは、1950年代のRIESS創業400周年の時の物です。工場の床は今でもほとんど変わっていません。
RIESS社の歴史は1550年、オーストリアの鍛冶屋からスタートし、1800年台初頭から現在のRIESSファミリーへと引き継がれました。
私たちがRIESSを愛する理由の1つに、地球環境に配慮した企業理念を掲げ、継続させている点があります。
「人にも環境にも優しい企業を目指す」
RIESS製品は100%リサイクル可能な上、製造過程で発生する加工くずから琺瑯を焼くオーブンの熱に至るまで徹底的に再利用されます。
また、製造に必要な電力に至っては、1930年代に建設した自前の水力発電によって賄われており、公害の原因となる有害な煙や産業廃棄物も一切排出しません。
驚くべきことに今から80年以上も昔から環境配慮型の企業としてのスタンスを守り続けている稀有な存在なのです。
1550年の創業からオーストリア中心部の同じ場所で、高品質な琺瑯製品を製造し続けるRIESS。現在も伝統的な工程を守りながら、1個ずつ丁寧に生産されています。
店頭に並ぶRIESS製品の中には、Labour and waitの為だけに作られたExculsive colorが多くあります。
ラインナップの中で1番人気の「ミルクポット」は、かつてLabour and waitロンドン店で200名もの販売待ちリストができあがったという逸話を持ちます。ミルクを温めるほか、深さを活かして食材のボイルやたっぷりと具材の入ったスープなどにおすすめです。
紅茶用のミルクの他、ソースやお茶など冷たいものは冷たく、温かいものは温かく保つことができる点も熱伝導の良い琺瑯ならでは。キッチンツールのスタンドや花器として等、あなたオリジナルの使い方でどうぞ。
ヴィンテージの琺瑯製品で見ることのできる赤みの強い独特なブラウンを再現しました。「BREAD」が示す通りパン専用の保存容器。全国のパン屋さんに使って欲しいユニークな1品です。もちろん使い方はご自由に。インテリアを兼ねた食品ストッカーとして如何でしょう?
ご紹介したアイテム以外にも、さまざまなバリエーションを取り揃えております。
ちなみに、Labour and wait tokyoの入口にある琺瑯看板も実はRIESS製の特注品なのです。ご来店の際は是非、お見逃しなく。
06 March, 2021
由緒あるこのワークウェアは1世紀以上も、イギリスの漁師達の間で必要不可欠なアウターとして着られていました。それはやがて画家、彫刻家、陶芸家、職人、小売商人の間で人気となります。それは一体どういう服なのでしょう?どうして、これほど愛されるのでしょうか?
フィッシャーマンズスモックは機能、実用性を備えたクラシックな服の一例です。
上の写真はフォークストン(イギリス南東部、Dover海峡に臨む港市)の漁師で、伝統的なポケット無しのスモックを着ています。
スモックは元々、帆布をカットして作られており、強くて丈夫な事から、セーター等の上から着られていました。着る人を暖かく、ドライに保ち、中に着ているウールのセーターを保護し、動きやすく快適なワークウェアでした。短めの袖で袖口が濡れない様になっています。この様な特徴はガンジーセーターやブレトン・シャツにも見られます。タイトフィットと詰まった首元のおかげで、最大限に着用者を保護してくれます。
ニシン産業が絶頂を迎えた1910年頃にはイギリス中の漁師のコミュニティーにスモックが支給されました。それは単なる漁師が着るユニフォームではなく、実用性、機能性に富んだスモックは多くの芸術家や職人達にも着られるようになりました。
船員や漁師が使用していた安価で、丈夫なスモックは完璧な作業服として芸術家達の間にも広がり、20世紀初頭にはイギリス南西部コーンウォール州のセント・アイヴスは芸術家にとって人気の場所となりました。
船員達が着ていたスモックはやがて、同じくイギリス南西部コーンウォール州にある漁村マウゼルから種々雑多に派生して行き、白い生地帆布以外の布でも作られるようになりました。
LABOUR AND WAITのフィッシャーマンズスモックは、原点に忠実に帆布から製作しました。
良いデニムの様に、洗えば洗うほど、着れば着るほど、味が出ます。
唯一オリジナルに手を加えた点は、袖を長くした事と3連のパッチポケットをつけた事です。
もちろん船員や彫刻家でなくともフィッシャーマンズスモックは、実用性・機能性に富んだタイムレスな服として現代でも通用すると、私たちは信じています。
Pictures from the National Maritime Museum Archive and the Pentreath Photographic Archives. Photograph of Eli Farrow the fisherman by Walter Clutterbuck, from the Norfolk County Council Library.
20 February, 2021
RE ENGINEERED BROWN BETTY TEA POT
2018年のロンドンデザインフェスティバルにおいて、Labour and Waitは再設計されたブラウンベティティーポットを発表しました。この新しいティーポットは陶磁器デザイナーIan Mclyntyre(イアン・マッキンタイア)とスタッフォードシャー地区にある、現存する最も歴史ある伝統的なブラウンベティティーポットメーカーであるCauldon Ceramics社による3年間に渡る研究・開発プロジェクトの賜物です。
このティーポットには茶葉でもお茶を淹れることができるように取り外し可能な茶漉しが取り入れられており、また、底と蓋の受け口部分の巧みなサイズ調整により、製造工場ではもちろん、カフェやレストランでも積み重ねて置くことができます。
この再設計されたティーポットはクラシックなブラウンベティの最も良い特徴を維持しつつ、デザイナーの洗練された美点が加わった事により、これまでの「エブリデー・オブジェクト」にさり気なく、機能性が加わった、新しいスタンダードへと導いてくれる事でしょう。
ブラウンベティはエトルリアの赤土を使用し、透明、若しくはダーク・ブラウンの美しいロッキンガムの釉薬とぷっくりとしたフォルムが特徴のティーポットです。
お茶を飲む習慣は何世紀も変わらない習慣です。世界中どこでも、人々はその人好みの茶道具を選び、お茶を淹れます。その中でも、控えめなデザインのブラウンベティは典型的な茶道具の1つとして、人々に選ばれてきました。
このティーポットがどれだけ人気なのかは、その生産数を見れば分かります。1926年までに、スタッフォードシャー陶器産業界は週に約50万個生産していました。それにも関わらず、意外と商品自身や初期の歴史やデザインについて、あまり知られていません。
誰もが購入しやすく、控えめなデザインながらも実用的なこの物体の良さは、日々の生活に紛れて、気づかれないままだったのです。
ブラウンベティのデザインは何世紀にも渡って変化を遂げてきました。デザイナーは不明で、「これ」という決定的なデザインはありません。しかし、無名でありながらも、どんどん発展していった物体なのです。何年もの間、何社もの製造社に渡って作られてきました。その作り方は各製造者の解釈によって異なります。少しずつ手を加え、新しいデザインとオリジナルのデザインのディテールが混ぜてあったりします。結果的に、ティーポットは機能や生産において不必要な部分はどんどんそぎ落とされていきました。
ロッキンガム釉薬と赤土の組み合わせはブラウンベティの成功の重要なキーとなるものです。このおかげで、歴史上に残るティーポット、または購入してから長持ちするティーポットとなりました。
スタッフォードシャーの土はオランダ人の兄弟、John Philip ElersとDavid Elersにより、1693年に初めて使用されました。兄弟はオランダ東インド会社が輸入していた、中国のファッショナブルで高価なイーシン・ティーポットに負けじと製作に取り掛かっていました。
地元の赤土の発見はスタッドフォーシャーにおいて技術的な革命の始まりでした。今ではStoken-on-Trentでしか作られていませんが、この赤土の発見により、6つ都市にて陶器産業が盛んになります。
スタッフォードシャーにあるCauldon Ceramics社は赤土を使用した陶器の製造の伝統を現在も守っています。ブラウンベティティーポットを製造している、最も古く歴史ある工場です。
ポットの歴史に置いて革新的な前例を作った、20年代に製造していたAlcock, Lindley and Bloore社の独特の特徴、”ロック式の蓋“と”ノン・ドリップ(水滴が滴らない)”のティーポットを再現しました。僅かな底とティーポットの注ぎ口の凸部分がティーポットの蓋がティーポットのボディー部分にはまるので、工場、カフェ、レストランで効率良く、積み重ね出来るようになっています。新たに茶葉を入れる茶漉しも加わりました。
新しい生産プロセスとデザインを取り入れながらも、ブラウンベティの伝統を守る事に大変注意を払いました。ティーポットを再デザインするにあたり、デザイナーはこのティーポットが改良され続けた長い歴史をあだにしてはいけない、と思いながら製作に取り掛かりました。
この最新のブランウンベティはファッションやトレンドを超えて、世界中の何百万人もの人々にとって信頼出来る道具として使われている、エブリデー・オブジェクトの価値とその歴史をプローモーションする事を意識して作りました。